第四神 失楽園

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「これは確かに強烈………ッ!! 安全運転で頼むぞ勇者よ!!」 「そうだぞ、あんまし無茶苦茶やるとお前の顔面にゲロぶちまけてやるからな。 そこら辺を考慮して快適な空の旅を届けてくれ。」 「ヒュー、空を飛ぶってのは気持ち良いもんだな!! この調子で頼むぜ勇者ちゃん!!」 「好き勝手言わないで下さい!! ただでさえ不調なのに3人も………それも大の男を乗せて飛ぶのは重いんですよ!!」 手を出せず見上げるしかない楽園の先鋒隊を眼下に、3人を乗せてリリーは一直線に空中浮遊都市目掛けて空を翔ける。 雷で空気を爆発的に膨張させそれを推進力として飛んでいるため移動速度は先程までの比ではなく、 遥か遠くに見えた空中浮遊都市が一日掛かりのハイキング程度の距離にまで迫る。 「ふー、爽快爽快。 流石に思い込みだけじゃ空は飛べねーよな! ザマーミロってんだ!」 「自己対象に限定した能力だろう。 実際は何も飲み食いせず自己認識のみで健康を維持し英雄並の身体能力を発揮するとやっている事自体は無茶苦茶であるが、 流石にその認識を自分の外に拡大して現実世界の改変を行う事は出来んようだな。 自分という閉じた世界だけで成り立つ楽園………それでも今の現実から目を背けたい者には抗い難いものだ。」 「………………」 「どうしたよ大将? まさかもう酔ったとか? 吐くなら後ろに向かって吐いてくれよな。 きっとゲロの虹がかかるぜ。」 「いや、あのさぁ………考えたんだけど。」 「あによ?」 「子供の頃大空を自由に飛べたらって、よく妄想してたんだよ。 そうすりゃ汚ぇ地下通路を駆けずり回らなくても、奇声上げながら凶器振り回してオレを追い回す街の連中から楽に逃げられるのにって。」 「ツッコミ所満載だが敢えて無視するぜ。 次行こう次、本題に入ろうぜ。」 「思い込みが激しい奴なら、空を飛ぶのも出来るんじゃねって思ったのよ。」 「少年、思い込みで人に翼は生えんぞ。 翼を得たところで、飛び方を理解するのに一生を費やすのではないか?」 「別に翼が飛ぶための唯一の手段って訳でもないっしょ。 ほら、例えば………気とか何とか不思議パワーで飛べるようになるとか。」 「オイオイ大将、せめてそこは魔法とか魔術にしてくれないと。 不思議パワーでどうこうなんて言われた日には何でもありになっちまうぜ? そこら辺の思考は放棄しちゃいけないとオレは思うね。」 「待って下さい、あれは…………鳥じゃない!!!! 人です、人がこっちに向かって来ています!!!!」 「もー、大将が余計な事言うから現実になっちまったじゃん!!!!」
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