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 新しい上靴はつま先が青い。一年生は青。光希ちゃんも三年間、青だった。同じ色。空っぽの靴箱にそれを入れて、自転車置き場に走って向かう。  教室でいたら早く教室から出たくて、教室から出ると早く学校から出たくて、学校から出たら、早く制服を脱ぎたくなる。  小学生の時はそんな事、思ったことなかったのに。  慣れれば、居心地が良くなるんだろうか。  僕って自分を呼んでも、あんな微妙な空気にならなくなるだろうか。  校門の桜はひらひらりとアスファルトに舞い降りて、通りをゆく人々に踏まれていた。桃色の花びらは茶色をにじませて、地面に張り付いている。土の上に落ちているとあまり気にならないのに、アスファルトに落ちていると、すごく目立つ。  周りに合わせて、早く慣れるようにしよう。  ちょっと失敗したけれど、次、気をつければ大丈夫、な、はず。まだ、中学生になったばっかりだ。  春風に少し黄ばんだリボンがひらつく。自転車を漕ぐリズムに合わせてスカートが揺れる。風がスカートに入り、いたずらしようとするとパンツが見えそうになる。全然、機能的じゃないし、自転車を漕ぐ事に集中できない。  でも、早く家に帰りたいから、僕は黙ってペダルを踏んだ。
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