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 そんな時、僕は男子が少しうらやましくなる。部活も、趣味も身長もばらばらで話をしていて、しかも、いつも決まったメンバーじゃない。特に体育の授業は、男子に混じりたいとさえ思う。体育の授業は女子が体育館、男子が運動場でニクラスが合同で行われる。男子の授業内容はサッカーで、半分のチーム分けだけで済む。クラスもそんなざっくりとしたグループ分けでいい。その様子を体育館から眺めて、ますます、うらやましく感じていた。  女子はマット運動や柔軟が中心でとてつもなく地味だ。動き回れるバスケやフットサルならラッキーだけれど、体育の先生の好みなのか、柔軟はお決まりのようにみっちりとやらされた。  だから放課後が待ち遠しかった。部活ではチームなど気にせずに、めいいっぱい体を動かす事ができる。  ホームルームが終り、体育館を目指す。  バレー部の決まりで、授業が終わるのが早い一年生が準備をすることになっている。  先輩と顧問のマキセンが来るまでに、体操服に着替え、ネットを張って、ボールを出すのが仕事だ。物品を出したら、モップがけをする。  何度もモップで往復していると、歌声が、ふいに耳に入った。  顔を上げ、風に乗って耳に届く音の先を辿る。  体育館から伸びる、屋根付きの渡り廊下の先に音楽棟が見える。正方形の窓が均等に並んだ白塗り壁の二階建。  ヨーロッパの羽を失った風車のようなかたちをしている。  歌声は一階の教室から響いているようだった。アルトの心地よい声。音楽の授業で練習を始めたエーデルワイスだった。優しい歌声は春風に乗って、体育館に入りこみ、空気を穏やかな色に変える。
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