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「この歌、綺麗だね」 後ろから声を掛けられ、モップがけの手が止まっていたことに気づく。部長だった。くりっとした瞳にピンクのつるっとした唇。肩まである髪は少し癖があり、ハーフアップでいつも可愛くまとめている。 「こんにちは」 慌てて挨拶をすると「他の一年生はもう体育館周りでアップの準備をしているから、モップは終わりでいいよ」と、言った。 倉庫に向かおうとすると、彼女は笑った。 「最近、あの歌声が聴こえるようになったんだよね」 「今日、初めて聴きました」 「私は何回も聴いたよ。早く来たら、いつも練習してる。熱心だよね」 「……頑張ろうって気になりました」 「うん、今日も練習、頑張ろうっ! じゃあ、始めようか。集合っ!」  準備運動をし、体育館の周りを五週走って、基礎練習とサーブ、トス、フォーメーションの応用練習を経験者と初心者に別れて、チームを組み、行った。 「スライディングでボールをレシーブするから膝のサポーターは必須だよ」 と、副部長の先輩に言われ、何度もサーブを受けている内に両腕の内側が真っ赤になった。  小学生の時と違って、ボールも早いし、受けると痛い。小学生のクラブ活動で、遊びの延長上でしていたバレーとは全然違う。  風を切るように、カーブを描き飛んでくるボールを、膝を曲げ、構えて受けようとするけれど、腕に当てるのも難しい。弾かれたようにボールは場外に飛んで行く。  最後にマキセンとサーブを打つ練習をして、十八時半に部活は終わった。  片付けが終わると先に男子は帰っていた。二、三年生はお揃いのジャージを着ているからすぐにバレー部だと分かる。  汗をかいたシャツを上だけ着替え、挨拶をして自転車置き場に向かう。
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