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―――僕の事を言われている。
それに対して、チロ君が前川さんたちに何かを言っている事は分かった。問題は手に持っているノートなのだろう。
「愚痴ノートは小学校の時からあったの知ってたでしょ? それに、本人に見せてないからイジメじゃない。本人は知らないんだから。何が悪いのか理解できない」
「……で、でも、そんな事されてたら、悲しいよ。前川だって自分がされたら悲しいでしょ」
「私は悪口を知らない所で言われるぐらい別にいい。だって、みんなが私の事好きなわけじゃない。チロだって自分が書かれてる訳じゃないんだから、関係ないでしょ」
「……で、でも、僕は、間違ってると思う」
「はぁ? 良い子ちゃんかよ。変なのは藤谷だから。城前小にもあんな子いなかったでしょ。チロはもっと周りを見た方がいいよ」
吐き捨てるように前川さんはそう言って、ノートをチロ君に投げつけた。
「あー、気分悪い。恵那がノートを音楽室に忘れるから、チロに見つかったんだよ。気をつけてよね」
「……前ちゃん、ごめん」
バレー部の子が投げつけたノートを拾おうとすると、チロ君はさっとそれを拾った。
びりりりりぃぃぃ、と紙が破ける音がしてぎょっとした。
チロ君は手を緩めず、次々にノートを紙切れに変えていく。
ビリ、ビリ、ビリリリリぃ。ぐしゃ、ぐしゃ、ぐしゃ。
「はぁ!?」
「ちょ、っと、チロ! ふざけんなよっ!」
前川さんが声を荒げて、手を振り上げた瞬間、震えていた足を踏み出した。
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