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 呆然(ぼうぜん)とその背中を見送って、足元に散った紙切れを見た。  大きく破れた部分に、紬、の名前が見えた。  ゆっくりと手を伸ばし、拾う為に腰を下ろす。  チロ君も同じように何も言わず紙を拾い始めた。  所々に、ウザい、キモい、あり得ない、と否定の言葉が目に入り、全部が自分に向けられているのかと、ざくざくと心が刺されたように痛くなる。  前川さんの事は好きでも嫌いでもなかったけど、クラスの中心で、いつも人に囲まれているから、そんな気持ちで僕を見ているとは少しも思っていなかった。向けられた言葉が悲しすぎて、拾っている紙がぼんやりとしていく。  灰色のコンクリートに雫がぽたりぽたりと落ち、泣いている事に気付いた。 「……ふ、藤谷さん」  チロ君が僕を見ていたけど、涙は止まらなかった。  僕は普通にしているつもりだった。  早くクラスに慣れたくて、何回かは彼女達に合わせた。  一人になりたくない気持ちだってある。馴染まなきゃいけないという、焦りも。  でも、僕にはそれがすごく難しい。
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