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 全員が席に着いたのを確認すると、マキセンは教室をぐるりと見回して視線を送った。そして「教科書もノートも要りません」といい、チョークを持った。 LGBTQ。 初めて見たアルファベットの並びだった。 「今日は、LGBTQについて話をします」  エルジービーティーキュー。  光希ちゃんが最近集めはじめた化粧品みたいな名前だ。マキセンは小さく息を吐き、続けた。 「人間には性別があります。男と女です。人はどちらかの性別で生まれてきます。そして、男の人は女の人を、女の人は男の人を好きになって、家族になります」  教室の中で、恥ずかしさを含んだような目線がちらちらと交され、冷たい空気が、そわそわしたものに変わる。 「君達は今、思春期と言われるその性差が少しづつ現れてくる時期にいる。前の授業で、身体や心の変化については勉強したから、また復習しておくように。今日はその性別の中での『違い』について考えようと思う。女の人が女の人を好きになったり、男の人が男の人を好きになる事もあります」 「……ホモだホモ」  小さな声に、マキセンは軽く頷いた。 「このアルファベットの意味は、各頭文字をとって組み合わせた言葉だ。Lはレズビアン、女性が女性を好きになること。Gはゲイセクシュアル、男性が男性を好きになること。Bはバイセクシュアル、男性も女性も恋愛対象となること。Tはトランスジェンダー、身体の性別と自分の性別が一致しない人、そして、最後のQはクエスチョン。つまり、まだ、自分の性別が分からない人だ」  黒板に書かれた英単語を食い入るように見つめた。  特に最後のQを。  何人かが僕を見ている気がしたけど、そんなことより、マキセンの話の続きが気になった。
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