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「マキセン、そんな事言ったの? つぐちゃんがそのエルジービーなんだっけ? に当てはまってるって? マキセンが勝手に決めつけてない? 前川さんもムカつくけど」
晩御飯の後、ソファで雑誌を読んでいる光希ちゃんに教室での事を話した。
キッチンで洗い物をしていたお母さんが顔を上げて、ちらりとこっちを見た。お父さんはまだテーブルで煮込みハンバーグを口に運んでいる。
「僕って呼んでるし、クラスの女子になじめないから……、そうかもって思われたんだと思う」
「……つぐちゃんはかっこいい女の子なのになぁ。なんで分かんないのかな」
雑誌をバサッとソファに置いて、光希ちゃんは腕を組んだ。
「僕って言うからややこしくなるのかな」
「うーん、そもそも、つぐちゃんはずっと僕って言ってたよ?」
光希ちゃんがそう言うと、キッチンから、違うわよ、とお母さんの声がした。
「紬が僕って言い出したのは、光希がかっこいいかっこいいって褒めたからよ。僕って言う方が、似合ってるって言って、お姉ちゃん子な紬はずーっと僕と光希ちゃん、僕と光希ちゃんって言ってたわよ」
「え、そうなの?」
僕の返事に、お父さんが代わりに頷いた。
「言ってたさ。写真撮るのにも、一緒一緒って」
「そうそう。その牧先生も、色んな性別や、考え方を生徒たちに知ってほしいためにその話をしたんじゃないかしら? LGBTQだっけ? お母さんは学校で習わなかったけど、女の子が好きな女の子はいたわね。他の子と仲良くしてたら、ぷんぷん怒ってたわ」
お母さんはふふ、と小さく笑って、鍋を水切りカゴに乗せた。手を洗い、泡を落とすと、ソファの横に腰掛けた。
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