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お風呂に向かい、服を脱ぎ、洗濯機に入れる。湯気で鏡が曇っている浴室に入り、シャワーで流す。
悩みと同じように、胸は知らないうちに少しづつ膨らんでいく。
違いを言いたい前川さん。
そのままでも戦っていると言ったチロ君。
マキセンは色んな人が居る、知ってからもめろ、と。
光希ちゃんは、僕をかっこいい女の子と呼び、お父さんは、好きな服を着ればいい、お母さんはスカートが嫌な僕は変じゃない、と言ってくれた。
意見は、ぜんぶ違った。
みんなの言葉が、頭の中で渋滞を起こす。
他の女子はスカートを着て、疑問にも思っていない。合わせられないのは僕の努力が足りないのかと悩んだ。チロ君にはそのままでいいと言われ、家でも受け入れられた気がして安心した。でも、前川さんの言葉がちくんと引っ掛かる。もしかしたら、それは逃げなのかな。
どうやったら、僕は周りに受け入れられるのか、を、ずっと考えていた。
けど本当は、周りが言ってくると、他人の目を気にしていたのは僕で、僕を一番許せないのは、僕だ。はっきり言えない自分にイライラしていた。
根本の思いをぐっと掘る。
色々、言われたけど、どうしたいの、か。
好きなように自分を呼びたい。
スカートに馴染まなくてもいい。
みんなと違う。けど、でも、それが僕なんだ。
ーーーそう、言いたい。
考えて、悩んで、口にして、また、考える。次は、行動だ。
動いた先で、ふと気がつけば、ぴったりな服が見つかるかもしれない。
ゆうらりゆうらり揺れて、形を次々に変える水面を見る。温度で形が変わる水のように、僕も服を温度に合わせることができたなら、と身を浴槽に沈めた。
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