6/13

35人が本棚に入れています
本棚に追加
/51ページ
「さっき、バレー部の部長と三年の尾崎先輩が一緒に帰ってた。あの二人付き合ってるんだ」  目が早いというか、見たことをすぐに口に出さないと気が済まないのか、探るように僕に言う。 笑って誤魔化していると、前川さんはイライラしたように口を開いた。 「言いたい事があるなら、声に出して言ってよ」 無意識のうちに小さいため息が出た。 「……なんで、ここに居るの?」 「藤谷がムカつくから」 「……僕が嫌いなら、ほっとけばいいででしょ。いちいち、言いに来なくていいよ」 「……なんで、そうやって、私の事、無視するのよ」 「無視してない」 「いや、してるっ! 移動教室、一緒に行こうって何度も声かけたのに。トイレだって、山野小の他の子達とも話したかったのに……」  怒りだけではない前川の言葉に、僕はちゃんと彼女に断った理由を説明しただろうかと、振り返る。 「……僕と仲良くなりたかったの」  前川は頷かなかったが、ちらりと僕の顔を見た。 「……最初からそう言ってくれれば良かった。僕は誰かと一緒にグループを組むっていうのが苦手なんだ。前川さんが嫌いなんじゃなくて、無視してる訳でもない」  彼女は納得出来ない表情を浮かべた。
/51ページ

最初のコメントを投稿しよう!

35人が本棚に入れています
本棚に追加