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「さっき、バレー部の部長と三年の尾崎先輩が一緒に帰ってた。あの二人付き合ってるんだ」
目が早いというか、見たことをすぐに口に出さないと気が済まないのか、探るように僕に言う。
笑って誤魔化していると、前川さんはイライラしたように口を開いた。
「言いたい事があるなら、声に出して言ってよ」
無意識のうちに小さいため息が出た。
「……なんで、ここに居るの?」
「藤谷がムカつくから」
「……僕が嫌いなら、ほっとけばいいででしょ。いちいち、言いに来なくていいよ」
「……なんで、そうやって、私の事、無視するのよ」
「無視してない」
「いや、してるっ! 移動教室、一緒に行こうって何度も声かけたのに。トイレだって、山野小の他の子達とも話したかったのに……」
怒りだけではない前川の言葉に、僕はちゃんと彼女に断った理由を説明しただろうかと、振り返る。
「……僕と仲良くなりたかったの」
前川は頷かなかったが、ちらりと僕の顔を見た。
「……最初からそう言ってくれれば良かった。僕は誰かと一緒にグループを組むっていうのが苦手なんだ。前川さんが嫌いなんじゃなくて、無視してる訳でもない」
彼女は納得出来ない表情を浮かべた。
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