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 光希ちゃんは、ネットで見た都会の女子高生に負けないくらいぴかぴかしている。スカートも、ブレザーも、リボンもパリッと新品の張りがあって、しゃんとしている。その姿はあまりにも僕と違っていて、何だか少し泣きそうな気分になった。悲しいでもないし、うらやましいでもない。悔しくもないし、怒っている訳でもない。しっくりする言葉が見つからない。でも、何だか泣きたい気持ち。  どうしてスカートを着なきゃならないんだろう、僕はどうして光希ちゃんみたいに喜べないんだろう、ってなんとなく簡単には口に出せない、気持ち。  見比べっこをしているとお母さんが部屋にやって来て、スカート丈をチェックしてくれた。やっぱり、丈は、もう少し長いほうがいいと言われ、スカートは中学校の近くの制服屋で仕立て直してもらうことになり、制服を脱いだ。  すると、なんだか気が楽になった。  光希ちゃんはサイズがぴったりだったので、そのまましばらく飽きるまで着ていた。鏡の前で髪型を何回も変え、紺やグレー、茶色、黒の靴下を並べ、一番制服に合う色はどれかなぁ、と履き替えていく。 「やった、茶色がぴったり。靴下の色が自由な高校っていいな」  光希ちゃんはそう言っていたけれど、僕は服装が自由な小学生の方が良かった。  入学式が来て、おめでとう、を何度聞いても、膝が隠れた自分に合ったスカートを履いても、ふてくされたような気持ちで、そう、思った。
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