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中学校は全部が大きい。
教室も、並んだ机も、窓も、ベランダも、ロッカーも、荷物や人がゆうゆうに収まる大きさだ。一学年一クラスしかなかった小学校とはスケールが違う。光希ちゃんは、学校行事や先生の話はよくしていたけれど、建物の話はしなかったので、想像を超えていてびっくりした。
三階に並んだ七クラス、すべてが新一年生の教室で、廊下に出てきた笑い声が跳ねて、駆けまわる。
教室に入ると、黒板に出席番号順で席が書かれていた。窓側の一番前に藤谷紬の名前を見つけて、席に着く。
「つぐちゃんが同じクラスで良かったぁ。知ってる子がいないと不安だよね」
同じ小学校だったゆうちゃんがセーラー服を着ている。
見慣れないから、どこを見たらいいか分からない。仕方ないから、白いリボンを見ると僕のより色が白かった。リボンぐらいは新品を買ってもらえば良かったと、少し後悔した。
「うん。やっぱり、城前小学校の子が多いのかな」
「そう思う。入学式で横の子も城前小だった」
この城東中学校は周辺の四つの小学校から生徒が集まっている。
城前小学校は僕の通っていた学校と違って、一学年五クラスもあり、体育館も二つあると聞いた。小学生の時から電車で習い事に行き、遊ぶ時もバスや電車を使いこなしているらしい。
自由に使いこなせる乗り物は自転車しかなかった僕は、それを光希ちゃんから聞いて驚いた。光希ちゃんは入学したばかりの頃、同じ田舎の中学校でもこんなに経験に差があるなんてショックだよ、と言っていた。
先生が教室に入ってきて、みんな一斉に自分の席に着いた。
お父さんより少し年上ぐらい、でもおじいちゃんより若いおじさん先生だ。にこにこと笑っており、春なのにもう半袖のポロシャツを着ている。今、半袖だったら、真夏は何を着るんだろう。とても気になる。クリーム色のシャツは太ったクマのキャラクターをみたいで、なんとなくほっとした。
先生は黒板に牧幹雄と大きな字で名前を書いた。
マキセンと光希ちゃんがアダ名で呼んでいた事を思い出し、笑いそうになった。ぽっこりお腹が海苔巻きみたいで、牧と海苔巻きの意味を合わせて、マキセン。
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