本物の千鳥足はまったく千鳥足じゃないと思ったらやっぱり千鳥足だった件

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 千鳥足とは、「ふらふらとした足取り、特にお酒に酔った人のおぼつかない足取り」を意味する言葉です。  この千鳥足の由来となったのは、チドリという鳥の歩き方だと言われています。チドリというのは、チドリ科の鳥の総称です。  私は、このチドリの一種であるコチドリを実際に見たことがあります。  コチドリの歩き方、ちっともフラフラしてません。素早く足を動かしてカサカサカサッと、軽やかに走ってました。  その時、私は思ったわけです。「どこが千鳥足なんだ」と。  千鳥足と聞いたら、誰もがフラフラとしたおぼつかない足取りを思い浮かべるでしょう。お寿司の箱詰めを片手にぶら下げて、頭にネクタイを巻いたおじさんがフラフラと歩いて電柱にぶつかり、「おい、何ボケッと突っ立ってんだ!」と電柱に向かって怒鳴るところまでイメージする人だっているでしょう。  それと比べたら、実際のチドリの足さばきの、なんとしっかりしたことか。  誰だ、酔っぱらいのフラフラした足取りを千鳥足とか言い出したやつ。  と、言うことで少し調べてみたところ、どうやらチドリの「足の動かし方」が千鳥足の由来になっているようです。  チドリは、内またで右足と左足を交差するように踏み出しながら歩いているとのこと。こう説明すると分かりにくいですが、つまりモデル歩きの様な足さばきらしいのです。  そう言われれば、千鳥足も納得できるかもしれません。酔っぱらった人が崩れたモデル歩きのように左右の足を交差させながら歩いているのを、何かのアニメで見たことがあるような気がします。実際に酔った人がそんな動きをするかどうかは別として。  しかし、足の動かし方は似ていても、パッと見たときにチドリはまったくふらついていないですし、動きも素早いです。ほんと、カサカサカサッという擬音が似合う動きです。おぼつかない様子や酔っぱらい感はありません。  やっぱり誰だよ、チドリを見て千鳥足とか言い出したやつ。細かいところまで観察してるけれども、フラフラはしてないじゃないか。鳥には詳しいんだろうけど、そのセンスは疑うぞ。  しかし、さらに調べてみたところ、チドリの歩き方ではなく「擬傷(ぎしょう)」を千鳥足の由来として紹介しているWebページを発見。  なるほど、これだ!  擬傷の動画を見てみると、擬傷を行っているチドリは地面で羽をばたつかせながらふらふらと歩き、しかも時にコテンと転ぶような動作をしています。(擬傷とは卵や雛を天敵から遠ざけるために、親鳥が「自分は弱っていて捕まえやすいですよー、こっち来いー」的な感じでケガをした振りをする行動のこと)  厳密には歩き方ではない気がするけれど、これは確かにおぼつかない危うい動き。酔っぱらった人のフラフラ感があります。酔っぱらって何もないところで転んで、「えへへ、酔っちゃった……」と照れ笑いするところまで見える……かもしれない。  誰だよ、チドリの擬傷から酔っぱらいの足取りを千鳥足って言い出したやつ。たぶん、擬傷なんてそう簡単には見れないぞ。めちゃくちゃチドリ観察してるじゃん。そして、酔った人を見て「これはまるでチドリだ!」と思うって、めちゃくちゃ鳥好きだな。  しかし、擬傷中のチドリは子どもや卵を守るために必死なわけで、その行動を酔っぱらった人の様子にたとえるのは……やはりセンスはないかもしれません。  ああ、でも千鳥足って結構昔からある言葉なんですね。コトバンクの日本国語大辞典を見ると、1244年頃の文献が出典として載っています。  となると、昔は擬傷がなんのための行動か分からなかったことでしょう。チドリのことを「突然フラフラしだす変な鳥」と、人々は思っていたかもしれません。  そして、現代よりも田んぼや畑などの水耕地や農地、それから湿地や干潟や開けた海岸なども多かったと思われます。チドリの繁殖に適した環境がたくさんあったはず。そう考えると、チドリは今よりもずっと身近な鳥で、「その辺でよく見られる鳥」だったのかもしれません。擬傷も割と観察できたのかも。  そんなことを考えると、少し寂しい気持ちになってきます。    ちなみに、チドリの仲間では私は前述したコチドリが好きです。黄色いアイリングが可愛いです。  そして、黄色いアイリングといったらアカコッコですよね! あー、三宅島に行ってみたいなぁ。 ※2024/10/24追記  ミユビシギの波打ち際での動きは、確かに酔っぱらっているようにふらついて見える……! だが、あれは違う、違うんですよ。あの動きは、足さばきが巧みで速すぎるがゆえなんですよ。足元が頼りないわけではなく、むしろ酔っ払いとは正反対なんです。  え、そもそもミユビシギはチドリではないじゃないかって? いや、ほらそこはシギ・チドリ類は見分けが難しいので、昔の人も良く分かってなかったんじゃないかなぁ(適当) <おわり> 参考ウェブサイト ・千鳥足. 精選版 日本国語大辞典. https://kotobank.jp/word/%E5%8D%83%E9%B3%A5%E8%B6%B3-566219#E7.B2.BE.E9.81.B8.E7.89.88.20.E6.97.A5.E6.9C.AC.E5.9B.BD.E8.AA.9E.E5.A4.A7.E8.BE.9E.E5.85.B8, 2020-10-15参照. ・鳥と人と. 千鳥足(ちどりあし)とは - 【写真で見る】千鳥の歩き方.http://diastataxy.jpn.org/siraberu184_tidoriasi.html, 2020-10-15参照. ・動物ネタペディア. 千鳥足の千鳥ってなに?. http://animalpedia.blog.fc2.com/blog-entry-91.html, 2020-10-15参照. ※こちらの動物ネタペディアのページでチドリの歩行や擬傷の動画が見られます。興味のある方はぜひ。
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