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「あたし明日も来るから。カメラ持ってきてよね」
「なんだそれ、えらそーに」
「ま、元気出しなよ。この世に女は、星の数ほどいるんだからさ」
それ、なぐさめてるつもりか?
「もしよかったら、あたしが葉山、つきあってあげてもいいしね」
おれはちょっと顔をしかめて、手で梨花を追い払う。
「いいからさっさと帰れ。ママが心配してるぞ」
「うん。柊斗くんは、お仕事がんばってね」
梨花がおれに手を振る。
「じゃ、ばいばい、柊斗くん」
「ああ、またな、梨花」
背中を向けた梨花のシルエットが、薄い闇のなかに揺れて消えていく。
おれは立ち上がり、地面に転がっている空き缶を拾って、ゴミ箱に放り投げた。
カコンッ。
今度は上手くおさまった。
「そろそろ、おれも行くか」
タバコくさいジャケットのポケットに、手を突っ込んで歩き出す。
空は深い青に染まり、瞬く星がひとつ。
夜はすぐそこまでやってきていた。
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