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「うるせぇな。お前には関係ないだろ」
「関係あるよ。となりでずっとため息つかれてたら、気になるじゃん」
梨花が口をとがらせる。目の前のベンチでは、あいかわらずカップルがいちゃついている。
「あたしでよければ相談にのるよ? 一時間でも二時間でも、一晩でも」
おれはもう一度、梨花をにらんだ。
「できるわけないこと言うな。いつもその紅茶飲み終わると、さっさと帰るくせに」
梨花が一瞬、眉をひそめ、すぐにぷくっと頬をふくらませる。
「だってうちの親うるさいんだもん。門限六時なんだよ。あたしもう高校生なのに、ありえないでしょ?」
公園に夕陽が差し込んできた。ブランコや滑り台が金色に光りはじめる。
「大人はいいよね、自由で。門限なんてないもんね」
梨花が前を向いて息をはく。おれはその横顔から、目をそらしてつぶやいた。
「よくもねぇよ」
「えー、でも柊斗くんはいつもひまそうじゃん。ここでのんびりコーヒー飲んでさ」
「ひまそうとか言うな。おれはこのあと仕事なんだよ」
「えっ、そうなの?」
梨花が驚いたような声を出す。これだからのんきなガキは……
「おれはな、これから夜勤なんだよ。お前が寝ている間に、仕事してんの。その前にここでコーヒー飲んで、気持ち切り替えてんだよ」
「へぇ……じゃあ、あたしが学校に行ってる昼間、柊斗くんは寝てるんだ」
おれは少し考えて答える。
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