薄明にたゆたう

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「いまからでも、遅くないよ」  梨花が言った。 「だって柊斗くん、まだぜんぜん若いじゃん。これからだってなれるよ」  他人事だと思って、勝手なこといいやがって。 「ねぇ、スマホでも撮れるかな。素人の芸術作品」  梨花がポケットからスマホを取り出し、空に向けた。 「あたし、この時間の空が、いちばん好きなんだ」  おれはその言葉を頭のなかで繰り返しながら、となりの梨花を見る。  キラキラと目を輝かせ、スマホ越しに空を見上げている梨花の横顔。  ああ、おれにもこんなころがあったっけ。  大人でもなく、子どもでもないと思っていたころ。昼でも夜でもない、ちょうどいまの時間のように、中途半端で曖昧な。  不満ばっかりで、はやく大人になりたいって、いつも思っていた。  あんなになりたかった大人に、やっとなれたっていうのに……おれはなにをやっているんだろう。
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