21人が本棚に入れています
本棚に追加
/32ページ
「そ、そうですね……。キューピンかな……。もう、みんな結構切ってるし……」
昔、家族麻雀を嗜たしなんだ記憶を呼び起こし、答えた。
「岩井、みさとに聞くなんておしまいだぞ」
父親が喉を鳴らして麦茶を飲み、小鼻を膨らませて言った。
「でも、勝利の女神かもしれませんし。じゃあ、キューピン切ろう」
「ま、負けちゃっても責任取れませんよ!」
みさとは慌ててテーブルから離れ、サンダルに足を突っ込む。ドアノブを握ったところで、岩井が呼び止め、自分の携帯電話を差し出した。
「みさとちゃん、悪いんだけどおうちでこれ、充電してもらえないかな」
部屋の角を見ると、コンセント差込口は、すでに他のメンバーの携帯電話が占領していた。
「いいですけど、かかってきたらどうします?」
「もう、この時間だし誰もかけてこないから、大丈夫」
「じゃあ、居間に置いておきますね」
ケータイを受け取った時、一瞬交えた視線に、みさとは寂しそうな影を見逃さなかった。
最初のコメントを投稿しよう!