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「みさとちゃんも夜更かししないようにね。あと、戸締りはちゃんとして。じゃあ、おやすみ」
岩井の姿がドアの後ろに消え、それが閉まる直前に、みさとはつい声を上げていた。
「あのっ、真奈美……元気ですか?」
言ってからしまった、と思った。でも、もう遅い。もう一度ドアが開き、岩井が部屋の入り口に立った。いつも目にするのは座っている姿だったのでわからなかったが、岩井は意外と背が高く、頭はドア枠に触れそうだった。彼は困ったように眉尻を下げ、なんとも言えない顔をしていた。
「えっと……」
みさとがTシャツの裾から出た膝頭に目を落としながら次の言葉を探していると、すっと視界に影が差した。すぐに視界に携帯電話が入ってくる。思わず受け取り、画面を見た。そこに笑顔の真奈美がいた。薄くメイクをし、グッと大人っぽくなっている。
「新しい携帯を買ったらしくて。元気みたいだ」
「良かったですね」
実は、真奈美が元気だろうが、そうでなかろうが、みさとにはどうでも良かった。
できれば元気じゃない方が良かった。みさとは中学三年の時に、自分の好きな男子生徒を奪った真奈美が大嫌いだった。
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