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 特に卒論を書き始めてからは、毎日、しんどくてたまらなくて、ゼミにもなかなか足を運べなかった。突然目の前が真っ暗になる感覚が襲ってきては、体を動かなくさせる。頑張ろうという気力はその度に削がれていって、最終的には底をついた。やっとの思いで卒業はしたものの、就職活動に割く心の余裕は一切なかった為に、そのまま社会に放り出された。  というか、そんな状態で、社会人として生きていけると思えなかった。誰かと協力して、社会の歯車になって、毎日働くというイメージがどうしても自分に当てはまらなかったのだ。  結果としてわたしは今、大学生の頃からアルバイトをしていた親戚の営むパン屋で、週に5回、アルバイトのまま働いている。  ……さくらにも、言われたけれど。  自分でもどうしてこうなってしまったのか本当に分からない。  いじめに遭ったことはない。  両親の仲も良好だ。  自分のことを否定するのは、わたし自身しかいないというのに、どうして「普通」というものが理解できないのだろうか。  わたしにとって、生きていることは罪で、生きるということが、罰そのものだった。
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