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「してない、けれど」 「何を?」 「……やりとりも、ブロックも。だってログインしてないから。通知も切ってあるし」 「ばーかー」  突然何を思ったのか、さくらはわたしが手元に置いていたスマートフォンを取り上げた。 「え、ちょっと」 「ロック解除して。今すぐ」 「どうして」 「ログインしてみなきゃ。メッセージが来てるかもしれないじゃん」 「やだよ」 「どうして」  わたしは思いつく限りの正当性を並べる。 「向こうだってこんな地味な女に会って失敗したと感じたかもしれないし。このまま一生ログインしない方がお互いの為だよ」 「意味分かんない。だって、本当にこのままでいいの?」 「このまま、って」 「初彼のワンチャン」 「ちょっと。そんなんじゃないって」 「とりあえず確認だけはしなきゃだめ。人間関係の基本です。ありがとう、楽しかった、返事遅くなってごめんなさい。ほら」  えぐいこと以上に正論をのたまうさくらに、観念するしかなかった。  わたしはスマートフォンを返してもらうと、しぶしぶ、数日ぶりに青い鳥のアイコンをタップした。 「ぶっちゃけ、あんたに必要なのは、彼氏よりも、人付き合いだよ」
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