4人が本棚に入れています
本棚に追加
「いえ。運転してもらってるし、これぐらいは」
「優しいなぁ、あおさんは」
伸びをしながらくらげ青年が言う。
「俺の友だちにそんな気を遣える奴いないよ。彼氏さんが羨ましい」
「い、いえ、いたことは……ないです」
「そうなの? 俺は、この前パン屋に一緒に行った奴。あおさんも会ってる」
「へ」
なんとも間の抜けた声が出てしまった。
この前って。たしか、男性、では?
「別れたばっかだけど。さ、行くか」
さらりと爆弾発言がなされたのに、何事もなかったかのように、くらげ青年は運転席へと戻る。わたしは慌てて助手席に乗る。
親父の恋人という表現といい、今の一言といい、今日は、驚かされることばかり聞いている気がする。
キャパシティがオーバー気味で黙り込んでいたら、くらげ青年が先に口を開いた。
「……訊かないの?」
え? と尋ねる前に、進行方向を見据えたまま、彼は言った。
「俺、簡単に言うと、バイセクシャルなんだ。この前の深夜のツイート……あれは、別れようって言われて、ちょっとまいっちゃってて。あのとき、だいぶあおさんの一言に救われたんだ」
「……そうだったんです、か」
最初のコメントを投稿しよう!