後篇

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「いえ。運転してもらってるし、これぐらいは」 「優しいなぁ、あおさんは」  伸びをしながらくらげ青年が言う。 「俺の友だちにそんな気を遣える奴いないよ。彼氏さんが羨ましい」 「い、いえ、いたことは……ないです」 「そうなの? 俺は、この前パン屋に一緒に行った奴。あおさんも会ってる」 「へ」  なんとも間の抜けた声が出てしまった。  この前って。たしか、男性、では? 「別れたばっかだけど。さ、行くか」  さらりと爆弾発言がなされたのに、何事もなかったかのように、くらげ青年は運転席へと戻る。わたしは慌てて助手席に乗る。  親父の恋人という表現といい、今の一言といい、今日は、驚かされることばかり聞いている気がする。  キャパシティがオーバー気味で黙り込んでいたら、くらげ青年が先に口を開いた。 「……訊かないの?」  え? と尋ねる前に、進行方向を見据えたまま、彼は言った。 「俺、簡単に言うと、バイセクシャルなんだ。この前の深夜のツイート……あれは、別れようって言われて、ちょっとまいっちゃってて。あのとき、だいぶあおさんの一言に救われたんだ」 「……そうだったんです、か」
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