後篇

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 わたしなんかの、あんな一言で、よかったんだろうか。  くらげ青年は、その彼に、ちゃんと想いを伝えられたのだろうか。  だからこうしてわたしに話してくれているのだろうか。  それが事実だとしたならば、少し、ほっとする。 「あおさんなら常に落ち着いているから、こういう話してもどん引きされないかなって思って」  信号が赤に変わり、フィガロは緩やかに停車する。 「普通の人間、って何なんだろうな」  それはわたしにとって意外すぎる呟きだった。  くらげ青年こそ、普通の人間の代表だと思っていたけれど。  まさか同じ疑問を抱えていたとは……。 「俺も別に隠したりしたいんじゃないんだけど相手が嫌がるから、いつも黙ってて。でもそしたら、それはそれで嫌だったみたいで。わっかんないよなー。他人の考えてることなんて」 「……そうですね」 「なんか、よく分かんないけど、あおさんといると安心する」 「え?」 「ううん。なんでもない」  くらげ青年ははぐらかしてみせたけれど、言葉はたしかに耳に残った。『安心する』なんて言われたのは生まれて初めてのことで、なんだか、胸の辺りがむず痒くなった。 ◆
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