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にやにやとしているさくらの期待にはとうてい応えられる筈もなく、わたしは首を横に振る。
「わたしっぽく、ない」
「かわいいって。流行りだから間違いないって」
ファストファッションのお店で、たくさんの色と形に囲まれて、わたしは着せ替え人形と化していた。
「いきなりスカートはハードル高すぎるよ」
「えー。じゃあガウチョにする?」
イエローベースの花柄ガウチョ。ブラックの小花柄。はたまた、派手なオレンジ。
次々とさくらがわたしに服を当てては、こうではないとぶつぶつ悩んでいた。
「デートでしょ?」
「違うって」
「え? だって、付き合い出したんでしょ?」
「違う、って……」
何度説明しても納得してくれない。
かいつまんで隣県へライブ遠征したということを話すと、さくらは意気揚々と服を買いに行こうと言ってきたのだ。海に行ったなんて話したら次に何を言い出すことやら。
「だって次の約束もあるんでしょ。あたしからしたらそれは完全に付き合ってるよ。あとは一発ヤっちゃえば完璧」
「……さくら、それは」
えげつない。
表情で言いたいことを察したのか、けらけらとさくらが笑い飛ばしてくる。
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