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「何恥ずかしがってんの。寝てみなきゃ分かんないことってたくさんあるよ? 経験がないから理解できないだけで。だって、あたしはいつだって、男のひとで満たされていたいもの」
さくらの言葉はどろりと流れ出してわたしの全身に纏わりついてくる。頭が、くらくらした。
だけど否定したって取り合ってもらえる筈もないので黙っていると、さくらは話題を変えてきた。
「そういえば、なみちゃん、オメデタだって。式のときはもうお腹にいたみたいだよ」
「そうなんだ」
乾涸らびた喉から声を振り絞る。なみちゃん、というのは結婚披露宴に招待してもらった友人のことだ。
「あたしも子ども欲しいなー。30までには2人産みたい」
「さくらの子どもならかわいいよ、きっと」
「そういう自分は?」
再び、奈落に落とされたような気分になる。
「……ぜんぜん、考えたこと、ない」
嘘だった。
「ちゃんと考えなきゃだめだよ。出産にはタイムリミットがあるんだから。この前お局さまに真剣に言われちゃった。チャンスは年に12回しかないんだよ、って」
ははは、と笑うのがやっとだった。
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