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 上司からの紹介やたくさんの余興や両親からの手紙で、ふたりがいかに愛されて育ってきて、そしてこれからも愛されていくのだろうというのは、充分すぎるくらいに理解できた。  だから、「そうだね」という言葉は、きれいで美しい時間だったね、という同意のつもりだった。  しかし常に恋人を切らさないさくらにとっては違って聞こえたらしい。 「まさか、好きなオトコでも、できた? ついに? とうとう?」  一気に真剣な表情に切り替わると、テーブル越しに顔を突き出してくる。  それがあまりにも唐突すぎたのでわたしはびっくりしすぎて瞳を大きくすることしかできなかった。  高校1年生からの付き合いだから10年めになるだろうか。だいたいのことを理解してくれている親友は、大きく、わざとらしく溜息をついた。 「ちょっとー……。25にもなって初恋がまだなんて、ほんと、どうかしてる」  それは会う度に向けられる、同情未満の感情だった。 「一生処女でいるつもり?」 「酔ってる?」 「まさか。シャンパンやワインで酔っ払うほどかわいくできてませんから」
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