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「俺の大学入学式のときに撮ったんだ。親父と、親父の彼氏。3人で暮らしてる。物心ついたときから、ずっと。それが普通だと思ってきたんだ」
彼の自由さの出自を垣間見たような気がした。
「親父は仕事で帰りは遅いし、彼氏は海外出張中だから、別に気にしなくていいよ。どう? 吐きそうなら言ってね」
くらげ青年は隣に座って背中をさすってくれる。
最悪の状況は過ぎていて、なんとか声を出せるようになっていた。ぼんやりとした頭で、情けなさを端的にまとめる。
「そこまでは辛くないから、歩けるようになったら帰ります」
わたしは目を瞑ったまま顔をあげた。
「ごめんなさい」
ごめんなさい。
嫌われてしまうだろうか。この一件で。だとしたらとても苦しいし、後悔しかない。
嫌われたくない。そう思う自分が、なんだか情けない。
少しの沈黙。
先に口を開いたのはくらげ青年だった。
「……嫌だったら話さなくていいんだけど、あおさんって、どうしてあお、なの?」
突然の質問だった。
まさかそんなことを訊かれるとは思っていなかったので、いつも以上に言葉に詰まる。
「……空とか海とか、青い色が好きだ、から」
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