後篇

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「……わたしも、青くんのことは、好き」  だけど。  だけど、どうしても。  言葉を必死に探す。  彼を傷つけないように。わたしが傷つかないで済むように。 「だけど。青くんが誰でも愛せるように、わたしは、誰のことも愛せないんだ……。今、はっきりと解った」  だから。  それをお互い、きっと、心の奥底では知っていたから。 「対極にあるわたしたちだから、惹かれるところがあったんだと思う……。わたしが青くんのことを好きでも、わたしには、それ以上何もない。……応えられない。ごめんなさい……」  いつの間にか頬を涙が伝っていた。  青くんがわたしを抱きしめる力が、優しく、強い。  胸が、張り裂けそうだった。このまま体ごと張り裂けて消えてしまったらどんなに楽だろう……。 「君のことを、知りたかった」  言葉を零したのは、どちらだったのだろうか。  空気が震えて、時計の針が進む。夜の闇が、2人の間にどうしようもない壁をつくっていく。  青くんは一瞬だけわたしから体を離すけれど、わたしの涙を唇で掬いとる。 「……なんだよ、それ。わかんないよ」  静かな稲妻。心に走る電流。
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