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カットフルーツとホイップクリームたっぷりのパンケーキがさくらの前に運ばれてくる。披露宴でフレンチのフルコースと山盛りのスイーツを堪能した後なのによく入るものだ。
パンケーキもひとしきり写真を撮り終えると、スマートフォンから視線を離さずにさくらは続けた。
「あたしはあんたが心配なのよ」
SNSにパンケーキとカプチーノの写真を投稿しながら。
小花のあしらわれた、きれいなフレンチネイルの指先で。
「高校の頃はきちんとした奴だなって思って一目置いてたときもあるんだから。なのに、まともに就職もせず、フリーターで、休みの日はライブハウス通い?」
「休みの日でなくてもライブには行くよ。最近は全然行けてないけど」
「馬鹿。そういう意味じゃない。あんたには人間として大事なものが足りてない」
ぐさり。
言葉や心に形があるとしたら、今のは確実にわたしに刺さっていただろう。人間として大事なものが足りていないことくらい、わたし自身が一番解っている。
だけどどうしていいのか分からずにいるというのに。
「そうだねぇ……」
故に、同意のような、自嘲のような、うまく説明のできない感情が零れた。
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