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……とは、さくらを調子に乗せるだけなので、言わないでおいた。
「なんか、ほんと、全然興味なかったんだけど。わたしが担当してる営業がほんとに仕事できなくてめっちゃ苛々してたんだけど、いざ寝てみたら相性が最高で」
「どうしてそんな流れになるの。……信じられない」
しかしさくらの肌は最高潮に艶々としていて、ぽってりとした唇は、エロティックという概念を説明するのに充分なくらい美しかった。
「式は来年の5月にするから、予定開けといてね」
「はいはい」
しょうがないな、と頷いてやる。どうか無事に挙式まで辿り着けますようにとは言わないでおいた。
一通りの報告を済ませると、にやにやとしながらさくらが尋ねてきた。
「そういえばツイッターの彼とはどうなったの」
「どうもなってない。フォロー解除しちゃったから。ライブ会場で顔を合わせることはあるかもしれないけれど」
「えええええ!」
耳をつんざくような悲鳴。思わず両耳を両手で覆った。
「あんた! いつの間に何があったの!」
「何もないよ……」
そう、本当に、何もなかった。
何もなかったから、離れる以外の選択肢を選べなかった。
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