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何社目かの最終面接の日は朝から大雨で、県内の一部では特別警報も出ているくらいだった。出かけるのも億劫なくらいだったけれど、しかたがないのでわたしはスーツ姿で家を出た。
県内最大のターミナル駅に着き、なんとか面接を終えて、とりあえず目についた本屋へ逃げ込む。
空調が効いていて涼しい。
入り口に積みあげられていた書籍の1冊が目にとまる。鮮やかな、六色の虹をイメージさせる表紙。
手に取ってぱらぱらとめくってみた。
『LGBTとは、さまざまなセクシャリティのなかの、レズビアン・ゲイ・バイ・トランスジェンダーを指す』
『レインボーフラッグとはゲイの社会運動を象徴する旗である』
『セクシャリティはそれら以外にも多岐に渡る』
それはセクシャル・マイノリティについて説明しているものだった。
不意に青くんのことを思い出す。
彼は元気にしているだろうか。
今、誰のことを好きだろうか。彼ならばすぐに次の恋人が見つかっていそうな気がする。
そしてある項目でめくる指が止まった。
『ノンセクシャルとは、他者に対して恋愛感情を抱いたとしても、性的欲求を持たない場合をいう』
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