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信号が青色に変わり、人々が一斉に動き出す。わたしはわざと青くんとすれ違ってみるけれど、イヤホンで音楽を聴いているようで気づかれなかった。聴いているのは、ヴィケルカールだろうか。
そういうもんだよね、と、自然に苦笑いが浮かぶ。離れてしまえばただの他人でしかない。
交差点を渡り終わるのと同じくらいで信号は点滅し出す。なんとなく振り返ると、青くんが、こちらを見つめていた。
……気づいていたんだ。
泣き出しそうな表情になっているように、見えた。
わたしは鼻の奥がつんと熱くなるのを飲みこんで、無理やり笑ってみせる。
‒‒ありがとう。大好きだったよ。
青くんに背を向けて歩き出す。もしも追いかけてきてくれたら、どうするかはそのときで考えよう。
足取りが、軽い。
どこにあるかは分からないけれど、今日はもう予定がないし、虹のたもとを目指して歩いてみようと思った。
了
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