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 最初は、好きになったばかりのバンドの情報を得る為だった。インディーズで活動している彼らの情報は得づらく、彼ら自身のアカウントがあるツイッターで確認するのが手っ取り早かったのだ。  そのバンドとの出会いはライブサーキットだった。元々好きだったバンドの前に彼らの出番があったのだ。小さなライブハウスで、本命バンドを観る為に最前列を確保したくて、名前しか知らないそのバンドのときから会場にいたのがきっかけだった。  ヴィケルカール。  エストニア語で『虹』。  バンドのメンバーもわたしも、エストニアがどんな国で、どこにあるかはよく分からない。  ギターヴォーカル、ギター、ベース、ドラムという4人構成のバンドであるヴィケルカールの特徴は、攻撃的な歌詞と歌声に対して、美しい風景のようなメロディーが映える楽曲だ。単純かと思えば耳を凝らすとそこには力強いリズムが潜んでいて、全体をしっかりと支えてくれている。一気に虜になった。ライブハウスの中で終演後すぐに一般流通していないミニアルバムを全て購入して、帰宅してすぐスマートフォンに取り込んだ。
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