Q航空

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「三・二・一、時間切れです!正解は、なんと長男の一郎様でした!残念!」 ハイジャック犯達の動きがピタリと止まった。時間切れになった事と一郎が裏切り者だった事に驚きを隠せない様子である。 「準備完了です、ではお願いします。良いフライトを!」 ハイジャック犯が一斉にシュポンと床から外へ放り出された。五人にこれ以上言い争いをさせない、素晴らしい手際の良さだ。司会乗務員のそばに居た生徒の一人が質問した。 「あの、二十五億円って凄い金額ですけど、仮にあの人達が正解しても大丈夫だったんですか?」 「心配ご無用です、実は五人一度に放り出すのは初めてでして、とても良いサンプルが取れました。これは二十五億以上の価値がありますよ。そろそろ着陸準備に入りますので、シートベルトを(ゆる)みのないようにお締めください」 シートベルト着用ランプが点灯した。 「当機はただ今から着陸態勢に入ります。クイズサービスは現時点をもって終了とさせて頂きます。しっかりシートベルトをお締めください。なお着陸後もランプが消えるまでは席をお立ちにならないようご協力お願い致します」 主翼の後ろのフラップが動き着陸準備を始めている。たまにヒュンと胃が持ち上がる感覚がある。きちんと降下しているのだろう。滑走路が見えて来た。ドン!と車輪が地面につく。着陸成功である。高校生達から割れんばかりの拍手が起こった。  この後済南高校一行は袴田抜きで北海道旅行を無事に終える事になるが、帰りの飛行機で小尾田好太郎が袴田の誕生日を答えられず、宮城県上空でほっぽり出されるのをこの時はまだ誰も知らない。
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