Q航空

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小尾田が声を張り上げた。こういう時大抵袴田は黙っている。自分に不快な出来事が起こった時のみ大声を出す類いの人間なのだ。保安検査は相変わらずガヤガヤしていたものの、数人の生徒の持ち物から携帯ゲーム機や化粧道具が見つかり、先生に没収された点を除いて滞りなく行われた。  搭乗ロビーを見渡すと済南高校以外にもサラリーマン風の男や、観光目的のカップルなどもちらほらいるようだ。この搭乗ロビーは建物の側面がガラス張りになっており、天気がよければ自然光だけでも十分に明るく、離陸の順番を待っているたくさんの飛行機が見える。これから済南高等学校一行が乗り込む北海道行きQ航空の旅客機も勿論その中に含まれているが、このQというのは別に特定を防ぐ為の配慮ではなく、本当にQ航空と呼ばれているのだ。機体の横っ腹中央にも大きく青色で「Q」と印字されている。 「これから搭乗だぞー!まずはA組から!袴田先生について行きなさい、それからB、C、Dと続いて!他のお客さんの搭乗を妨げないよう直ぐ自分の座席に着く事!」 「わーわたし初飛行機!」「やべえ!」「ビーフオアチキンどっちにしよう」 生徒達の気分も高揚する。まあ一般的に国内線で機内食は出ないのだが。 「やかましい!静かにしろ、不愉快だ!」 袴田が怒鳴り散らす。シーンと皆黙り込み、粛々(しゅくしゅく)と飛行機へ乗り込んで行った。
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