Q航空

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 機内に入り自分の席に着くと、どうにもすぐ眠くなるのは私だけであろうか。チェックインや荷物検査独特の緊張感から解き放たれたせいか、単純に空港に着くまでの道のりが長く既に疲れているのか、はたまた飛行機内の空調の仕業(しわざ)かよく分からないが、座った瞬間にうとうとし始める。しかし済南高等学校一年生に至ってはそんな事はないらしい。全クラスで同じ旅客機に乗るという特殊な状況下で神経が高ぶっているようだ。それにこれから数日間寝食を共にし、色々な所を訪れるのだからそうなるのも理解出来る。飛行機が離陸態勢に入りガタガタと音を立て、グイッと機体が持ち上がった瞬間には拍手すら起きた。教師達も、たとえあの偏屈な袴田すらもこの時だけは注意などせず、生徒の好きにさせてやった。  離陸後しばらくして、客室乗務員が何かを配り始めた。おつまみなどの軽食やミネラルウォーターが普通だが、早押しボタンのようなものが手渡されていく。  そして機内アナウンスが流れる。 「皆様、本日はQ航空にご搭乗いただき誠にありがとうございます。ただいま配布致しましたボタンについて説明させて頂きます。座席に備え付けられた画面、もしくは前方の客室乗務員の手本をご覧ください」 「こちらは回答ボタンになっております。無料で提供させて頂いておりますので、旅の思い出にどうぞ。当航空会社をご予約して頂いた際の利用規約に記されていた通り、これからお客様の中からランダムに選ばれた回答者の方には飛行機中程(なかほど)のスペースまで来て頂き、クイズに答えて頂きます。そして不正解の場合はそこから落下して頂きます」
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