Q航空

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とフライトアテンダントがくだらない決まり文句を言った刹那、袴田は後方に座っている小尾田を見つめた。彼が小尾田を一瞥(いちべつ)した理由はよく分からないが、恐らく条件反射に近いものだったのだろう。袴田は面倒ごとを全て小尾田に押し付けていた。若い人材に経験を積ませるためとか仰々(ぎょうぎょう)しくのたまってはいたが、その実ただ自分がやりたくなかっただけである。その押しつけ癖が、自身が窮地に追い込まれた時に「小尾田を見る」という行為に結びついたのだ。対して小尾田は目をそらす。自分が生徒達になんと呼ばれているかも分かっていないのが悪いのだ、自分は媚売太郎と呼ばれているのは知っているぞ。と彼は心中で思った。シュポンという音と共に、袴田は姿を消した。落下の様子が映像で流れたが二回目という事もあり、パラシュートが開いたときもパラパラと拍手が起きる程度だった。  次の回答者を選ぼうとした時、最後部(さいこうぶ)からどたどたと覆面の男五人組が機内中程までやって来た。 「今この機体をハイジャックした!政府に連絡をとり身代金を要求する!それまでお前ら全員人質だ!」 そういうと、拳銃の様なものをもった主犯格と思われる人物が小尾田好太郎に銃口を向けた。 「おい、お前立て!そうだ!こいつがどうなってもいいのか!」 キャー!と女子生徒数名が悲鳴を上げる。 「あの、身代金は幾らくらいを想定していますか?」 司会乗務員が臆せず質問した。 「え?いや、それは政府の人と相談しながらちゃんと決めようかなって」 「例えばお一人様あたり五億円、五人で計二十五億円でいかがでしょうか?」
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