19XX年、夏。

2/2
0人が本棚に入れています
本棚に追加
/5ページ
そんな時。 夕飯の買出しのピークが始まる18時過ぎ頃にある女性が入店した。 少し小柄で、気取らないワンピース、お団子ヘアの、可愛らしい女の子。 僕は思わず目を奪われてしまった。 これが、ひとめぼれってヤツなんだろうか…顔が熱くて、胸のドキドキが止まらない。 レジに彼女が来ると手が震えて、いつもなら絶対にしないのにお釣りを落とした。 僕が僕じゃないみたいですごく変な感じがした。 「あ、すいません…」 気にしてませんよ言うようにペコッと会釈をされた。振り返り、去り際にフワッと香る甘い香水が、また僕の顔を熱くした。 その日は甘い香りが忘れられずに、あまり眠れぬ夜を過ごした。 翌日。 またシフトは昨日と同じく、夜担当。 18時を過ぎた頃、なんとまた彼女がやってきたのだ。 僕の胸はドクンと高鳴り、嬉しさと、恥ずかしさと…なんとも言えない感情が渦巻いていた。 また僕のレジに並ぶ彼女。 少しでも長く一緒にいたくて、お釣りの切れたフリをしてレジ前に引き止めた。 「お、お待たせしてっ、すみません…」 緊張して上手く話せない僕に対して、彼女は笑顔で「大丈夫で〜す」と言い、店をあとにした。 たったそれだけで、僕はもう羽が生えたかのように体がが軽くて、浮き足立っていた。
/5ページ

最初のコメントを投稿しよう!