18時過ぎのアノ子

2/2

0人が本棚に入れています
本棚に追加
/5ページ
その日を境に、彼女は僕によく話しかけてくれるようになった。 なんてことない雑談だけど、僕は顔が熱いのを自覚しながら、会話を続けられるよう必死だった。 店に迷惑をかけないよう、ほんの短い幸せな時間。 夏休みも終盤に差し掛かった頃、珍しく19時半頃彼女が来店してきた。 「今日は何時上がりなの?」 と彼女が尋ねてきた。 「にっ、20時です!」 「じゃあ待っててもいい?」 「…えっ」 突然のことに言葉が詰まってしまった。 彼女から声をかけてくれて、ましてや会いたいと言ってくれるだなんて。 「ごめんごめん、困るよね。じゃあまた…」 彼女はバツが悪そうに微笑み、背を向けて歩き出した。 「ま、待って!」 自分でも驚く程大きな声が出てしまった。 「嫌じゃなければ…その、待っててくれると嬉しいです…」 今度は蚊の鳴くような小さな声で答えた。 「嫌だったら待つなんて言わないでしょ、変なの〜」 彼女はクスクス笑いながら、雑誌コーナーに移動して待ってくれていた。 僕は慌ててバックヤードへ入り、店長に早退させてくれと懇願した。 年の功か、僕の顔が赤いからか、店長は早退を快諾してくれた。 店長ありがとう! 僕はまた頑張って働きますから!! 慌てて身支度を整えて、雑誌コーナーへ彼女を迎えに行くと、少し驚いた顔をし、そして優しく微笑んだ。 「さっき買ったポテチ、そこの公園で食べながらお喋りしない?」 「も、もちろん!!」
/5ページ

最初のコメントを投稿しよう!

0人が本棚に入れています
本棚に追加