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その日を境に、彼女は僕によく話しかけてくれるようになった。
なんてことない雑談だけど、僕は顔が熱いのを自覚しながら、会話を続けられるよう必死だった。
店に迷惑をかけないよう、ほんの短い幸せな時間。
夏休みも終盤に差し掛かった頃、珍しく19時半頃彼女が来店してきた。
「今日は何時上がりなの?」
と彼女が尋ねてきた。
「にっ、20時です!」
「じゃあ待っててもいい?」
「…えっ」
突然のことに言葉が詰まってしまった。
彼女から声をかけてくれて、ましてや会いたいと言ってくれるだなんて。
「ごめんごめん、困るよね。じゃあまた…」
彼女はバツが悪そうに微笑み、背を向けて歩き出した。
「ま、待って!」
自分でも驚く程大きな声が出てしまった。
「嫌じゃなければ…その、待っててくれると嬉しいです…」
今度は蚊の鳴くような小さな声で答えた。
「嫌だったら待つなんて言わないでしょ、変なの〜」
彼女はクスクス笑いながら、雑誌コーナーに移動して待ってくれていた。
僕は慌ててバックヤードへ入り、店長に早退させてくれと懇願した。
年の功か、僕の顔が赤いからか、店長は早退を快諾してくれた。
店長ありがとう!
僕はまた頑張って働きますから!!
慌てて身支度を整えて、雑誌コーナーへ彼女を迎えに行くと、少し驚いた顔をし、そして優しく微笑んだ。
「さっき買ったポテチ、そこの公園で食べながらお喋りしない?」
「も、もちろん!!」
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