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ぽろっ。
シカがカモシカのゲンタの方を振り向いたとたん、木に擦り付けていた片方だけの角が頭から抜けて地面に落ちた。
「あ、これ・・・僕の角だ。拾ってきちゃったの?
・・・あっ!君は!!」
「あっ!!お前さんは?!」
そのシカが見覚えあるシカだと知ったとたん、口にくわえていた片方だけの鹿の角を地面に落とした。
「ノルン・・・ノルンじゃないか?!」
「ゲンタ!!奇遇だねぇ!!まさか僕の角を拾ったのはゲンタ!!君だったんだね!!」
カモシカのゲンタとシカのノルンは、幼なじみだった。
物心ついた頃から、小鹿の頃のノルンと子カモシカの頃のゲンタは一緒によく遊んでいた。
お互い成獣となって、各々の生活となってから久しぶりの再会だった。
「いゃあ、ノルン。立派な角を生やしてたんだねぇ。すっかり雄鹿の風格だねぇ。」
「で、ゲンタ。その僕の角で何をしようと思ったんだい?」
「ぎくっ!!」
「それはその・・・」
ガサガサガサガサ・・・
その時だった。
生い茂った茂みの中から、大きな巨体がカモシカとシカの直ぐ側に飛び出してガオーーーーーー!!と、鋭く太い爪を振りかざしてきた。
「く・・・」
「クマだぁーーーーーー!!」
カモシカのゲンタは、慌てて遇蹄でシカのノルンの角を頭に乗せてブルブル震えた。
「こ・・・こうして・・・クマが来た時に・・・威嚇に・・・使おうと・・・」
「ねえ!!僕の角!!返して!!角が無いと僕!!ただの弱い鹿になっちょうよ!!」
「ごるぁーーーー!!カモシカぁーーー!!今さっきの木の実の時よくも舐めた真似をしたなーー!!」
凶暴グマのクータは鋭い牙を剥き出しにして、顔を真っ青にして慌てて逃げていくカモシカとシカをノッシノッシと追いかけた。
「こっちとら、好物のドングリも不作で腹ペコなんだーーー!!
お前達を喰わせろーーー!!」
「やだーーーー!!」「やだよーーー!!」
ぽろっ・・・
「あーーーーっ!!しまったーーー!!」
シカのノルンの口にくわえていた鹿の角が、拍子に地面に落としてしまった。
「んーーー?!」
クマのクータは、地面に落ちた鹿の角を拾い上げた。
「おーーーーい!!シカさーん!!落とし物ーーー!!」
クマのクータの呼び止めをシカトして、カモシカのゲンタとシカのノルンはお逃げなさいとばかりに、
スタコラサッサのサ!スタコラサッサのサ!と、
森の向こうへ駆けていってしまった。
~カモシカが鹿の角を拾ったよ~
~fin~
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