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ニホンカモシカのゲンタは、ひたすら山野を巡って餌を探して散策していた。
さくっ、さくっ、さくっ、さくっ。
遇蹄を開いて崖をよじ登ったり、ふくよかな鼻で辺りを嗅いで木の実のありかを探りながら、カモシカのゲンタは美味しそうな木の実を想像しながらウキウキと歩いていた。
「うひょー!木の実なってるぅーーーー!!」
目を輝かせたカモシカのゲンタは、たわわに実った木の実を早速口いっぱいに頬張ろうとした。
「いっただっきまーーーーー・・・」
ぶふーーーーーーっ・・・
「ん?」
口が涎まみれのカモシカのゲンタの後ろから、生暖かい空気が吹き込んできた。
ぶふーーーーーーっ・・・
「あ、まただ。何か嫌な予感・・・」
ぶふーーーーーーっ・・・
ぶふーーーーーーーーーっ!!
カモシカのゲンタが恐る恐るそーっと、振り向くと・・・
「・・・えっ?!」
そのカモシカの尻へ吹き出している生暖かい空気は実は、後ろで身構えている1匹のツキノワグマの鼻息だったのだ。
「なあ、おめー・・・この木の実は俺が前から目を付けてたんだよ!」
「そ、そんなこと知らないよぉ!!」
「はあ?俺に楯突くつもりか???」
ツキノワグマのクータは仁王立ちすると爪を立てて、「がおーーーーーー!!」と山じゅうに響く声で吠え立てた。
「ひいいいいい!!」
カモシカのゲンタは恐怖で思わず腰を抜かした。
「おめーが喰われたくなけりゃ早くここから出ていけーーー!!」
「ごめんなさーーーーーい!!ごめんなさーーーーーい!!ごめんなさーーーーーい!!ごめんなさーーーーーい!!」
カモシカのゲンタは激昂して鋭い鍵爪をぶんっ!ぶんっ!と振りかざすツキノワグマのクータに怯え、死にものぐるいでスタコラサッサとその場を逃げていった。
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