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「さて、と・・・」
カモシカのゲンタは池の水に映る自らの姿を見ながら、落とし物の鹿の角を1対拾いあげると自分の竹の子のように短く尖っている角に宛がってポーズを決めてみた。
「うーん!おいら、鹿みたい!!かっこいいーー!!
・・・ん?!」
後ろで誰かが見ている気配を感じたカモシカのゲンタは、徐に振り向いた。
さっ!
・・・やっべぇ・・・!!
・・・他の動物仲間達に、しっかり見られたね・・・恥ずかしいぃーー・・・!!
一瞬、カモシカのゲンタは恥ずかしくて赤面した。
・・・そっか・・・
・・・鹿の角が片方1対しかないから、恥ずかしく見られてるんだ・・・
・・・あともう片方1対を見つければいいんだ・・・!!
カモシカのゲンタはそう思うと、片方1対の鹿の角を口にくわえて持って、もう片方の鹿の角を野山を駆け巡って汲まなく探し回った。
「おーい!!鹿の角もう1対やーい!何処行ったぁーーー!!」
さくっ、さくっ、さくっ、さくっ、さくっ、さくっ・・・
落ち葉を蹄で掻いて捲っても、
土埃を鼻息で吹き飛ばして地面を探っても、
崖をよじ登って何処かに引っ掛かってないか確かめても、
何処を探しても、もう片一方の鹿の角は一向に見つからなかった。
「本当に、鹿の角は何処に落ちてるんだあ?」
じすっ!じすっ!じすっ!じすっ!じすっ!じすっ!じすっ!
「ん?」
カモシカのゲンタの耳に木と何かが擦れ遭う音が、林の向こうから聞こえてきた。
じすっ!じすっ!じすっ!じすっ!じすっ!じすっ!
「何だろう?行ってみよう」
じすっ!じすっ!じすっ!じすっ!じすっ!じすっ!じすっ!じすっ!じすっ!じすっ!じすっ!
「音は近いぞ?!ここだ。」
カモシカのゲンタは、その木の擦れあう音のする場所に駆けていった。
じすっ!じすっ!じすっ!じすっ!じすっ!じすっ!じすっ・・・
「ん?なあに?」
木の擦れあう音を林中に轟かせたのは、片一方しかない角を木に押し付けて擦っている一匹のニホンジカだった。
「あっ!!君は!!」
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