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「沙也加、化粧品変えた?」
「え?」
美香がしげしげと、わたしのほっぺたをぺたぺた触って言った。
「ちょ、恥ずかし……」
男の子たちの前で悪気なく触られて、ひゅーと冷やかすような声がした。
「なんか肌の色が良くなってるう」
「そ、そう?」
美香に褒められたのがうれしくて恥ずかしくて、逃げる様にして校舎の裏庭に
逃げ込んだ。
そこで、いつものコンパクトミラーを開いて見る。
以前より肌荒れが引いて、たしかにちょっと顔色が良くなったような。
「でも……なんで?」
どうしたって腑に落ちない……
数日前、ここで出会った女神に、ブランドの化粧水も乳液もなにもかもぜんぶ
取り上げられて、それ以来洗顔と保湿ぐらいしかできなかったのに。
女神はあれから夜になると現れて、唄を歌っては、わたしが眠ってしまって
朝になると姿は消えていて。
そのぶんスマホもできず、いくらか早く寝てしまうようになっていた。
ミラーに映っている、ルージュの塗った唇を見た。
「そんなの当たり前よ。どんなにいい化粧品でもね、肌にとっては異物なんだから」
昼休み、わたしは保健室に来ていた。
保健室の先生に、女神のことは隠して聞いてみたらあっさりそう返ってきた。
先生が説明してくれたことには、どんなにいい成分の化粧品だろうと、肌には負担をかけていて、ホントはいいことはないんだって。
保湿はいいとして、スマホやるよりちょっとでも早く寝るほうがよっぽど肌にいいのよ、とも言われて、ちょっと拍子抜けしてしまった。
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