女神のルージュ

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「これはいまの君だよ。いまから色づく」 「……わたしが?」 白く淡く、輝く花々。 「そう」 「……」 わたしは、こんなに綺麗かな。そんなことを考えた。 「……ねえ、カリス」 「うん?」 「あなたは、なんでわたしを見つけたの。あなたは、なんの女神さまなの?」 カリスはああ、と振り返り、 「ぼくは……母様から「蕾を花に、花が色を与えられるのを、手引きする」役割を与えられた」 よく、わからない。でもわたしは、カリスの横に座った。 夕空は夕闇に。夕闇は夜に。 その夜の谷底で、わたしよりずっと綺麗な花々が、やさしく揺れていた。 わたしはこんなに、綺麗じゃない。 「あなたは、好きな人……いるの、カリス」 カリスは答えなかった。 「きみはいるんだね」 「ん……」
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