女神のルージュ

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「でもわたし、美人じゃないから……」 そうつぶやいたとき、カリスが腕を引っ張った。 「……!」 軽く唇が触れる。 いい匂いがした。 「女神ヘラ、ぼくの母様からの祝福を」 目の前の白い花々が、淡い桜色に染まっていく。 「さあ、彼の心を捉えるんだ。この花々をこんどは紅く、染めておくれ」 カリスの指が、ゆっくりと、女神のルージュをぬったわたしの唇を、なぞる。 「そんな……」 頭がぼうっとする。 カリスの目が、月明りのした妖しく輝くのが怖くて、見とれた。 怖い。 逃げなきゃ。 如月(きさらぎ)くん。 怖いよ、助けて。
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