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「──さぁて、どこに行こうとしていたのかな」
耳元で囁くように言われた。
この声は知っている。
さっきまで無理矢理犯してきた人達の一人だ。
その声だけでもぞわりと背筋が凍った。
ついさっき外に出たばかりだったから、まだその辺りにいたのだろうか。
そうだとしたら、迂闊だった。
しかし、その予想とは裏腹のことを言われた。
「いつかそうやるとは思っていたよ。二人でいるとろくでもないことを考えるんだな。引き離しておけば良かったな」
前からそうすることを分かりきっていた口ぶりだった。そうだ。妹と一緒に見ていた時から、そんなことは分かっていたのだ。だから、わざと両手を自由にさせ、扉を開けておいて、そして、扉の影からその隙を伺っていたのだろう。
考えと行動が浅はか過ぎた。
「同じ顔をした二人を同時にするの面白かったから、良くね?ま、これからはそう出来なくなるのは悲しいなぁ」
「離してっ!離してッ!」と暴れる満月を、しかし、傍から見ると、暴れているようには見えず、それに体格差もあり、いとも容易く地面にうつ伏せに押し付けて縛りつけているもう一人がそう言って、あざけ笑っていた。
これからはそう出来なくなる?
それは、一体どういう……。
呆然としかけていた想一郎の耳に「想一郎君ッ!想一郎君ッ!」と悲痛な叫びを上げている満月の声が聞こえ、ハッとする。
土で汚れてしまった満月はいつものように後ろ手に縛られている他に、首や胸の間、股に掛けて縄を通され、そして、あの中心にもキツく縛られていた。
何とも痛ましくも、淫猥な姿なのだろう。
不謹慎にもそう思ってしまっていた。
「満月ッ!満月ッ!」
羽交い締めになっているのを身を捩って離れようとした。
が、その時気づいた。
背中にぴったりと両手が纏まって縛られていたことに。
自分の思い違いかと思い、動かしてみるが、びくともしない。
これじゃあ満月と同じ格好じゃないか。
いつの間に。
「へぇ〜満月というお名前を付けたんだね。いい名前じゃないか。アレに名前を付けるだなんて、想一郎君はいい子だねー。だけどね、その満月君とは今日でお別れだよ」
股に、胸の間に、そして、首元に圧迫感を覚えつつも、その言葉を理解してしまった。
「じゃあ、満月君は、想一郎君のことを気持ち良くさせてしまったから、今度は俺を気持ち良くさせような〜」
「嫌だッ!嫌!想一郎君としたいッ!!想一郎君ッ!!」
顔が涙と鼻水でぐしゃぐしゃになっていた満月は引きずられ、蔵の中へと連れ戻される。
「満月……」
「さて、お別れが済んだところで、想一郎君は違う場所で俺と楽しもうか」
喪失していた想一郎の目を布で隠した。
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