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一.忌み嫌われた者
山に囲まれた小さな集落。
そんな村の長の家で産声が上がる。
家族の者達は皆喜んだが、それも束の間、ざわめきへと変わる。
なぜなら、一つの腹から赤子が二人出てきたからだ。
「ありえない」
「畜生腹だ」
口々にそう言い合う。
しかも。
酷い言われようをしているのに、母親がうんともすんとも言わないのに気づいた家族の一人が呼びかける。
返事がない。
それで気づいた。死んでいる、と。
輪にかけて言い合う。
このまま生かしていると、そのうち災いを齎してしまう。どちらかを殺すべきだ。
一人がそう声を上げると、次々と賛同し合う。
そんな時。静止する声が聞こえた。
途端に一気に静かになる。
その者は村長であった。
村長は言う。
「"もしも"の時までに生かしておけ」
村長の言うことは絶対であり、それに否が応でも従わなければならない。
皆、一瞬顔を見合わせたが、賛同の声を口々に言った。
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