白バイ戦士『交機のちーちゃん』

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~劇場にて~ 非番の日。劇場で売れない若手芸人を見るのが好きなちーちゃん。今日も劇場に足を運んでいる。 「なんでやねーん!もうええわ!やめさせてもらうわー!」 「ありがとうございましたー」 「ごるあああああああああああああああああああああああああああ!!!」 「え?」 「は、はい?」 「なんやねん!今の『オチ』は!全然『落ちて』ないやないけ!」 「あのお…、他のお客さんが…」 「知るかあああああああああ!今のままでは売れんぞおおおおおおお!他のお客さんとか言うてる場合かああああ!!」 「あ、あのお…」 「す、すいません…」 「だいたい、なんや、今の。『とーくいっといーじー』て!『ていくいっといーじー』とかけてるのは分かるで。でもな、どこがおもろいねん!!全然『オチ』てないから!『落としどころ』が間違ってんねん!」 「は、はい…」 「す、すいません…」 「あ、他のお客さん。すいませんね。でも皆さんもそう思うでしょ?そこのあなたもそう思いません?」 「え?僕ですか?あ、あ、そ、そうですね…」 「だろお!?ほれみい。お客さんみんなそう思てるで。しゃーないから今日は俺が見本見せるから。今日だけやで。特別に」 「(ま、まじか…)」 「(う、うざい…)じゃあ、お願いしますー」 (ちーちゃん、キリッ!)「て、て、て、ててれん、て、て、て、ててれん♪おい、お前らも一緒にやらんかい」 「え?あ、はい…」 「(え?「せーらーふくをぬがさないで」?)は、はい…」 「しゅうかんしみたいな♪えっちをしたいけど♪おい、なんで『合いの手』入れんねん。『にゃんにゃんにゃにゃにゃにゃ』やろが。ちゃんとやれ、ちゃんと」 「(・・・)は、はい…」 「(う、うざい…)は、はい…」 (ちーちゃん、キリッ!)「すべてをあげてしーまうのは、もったいないから♪もったいないから♪もったいないかーら♪おい、なんで振り付けとばっくこーらすせんのや。ちゃんとやれよ!遊びちゃうぞ!おい、やる気あんのか!?帰ってもええんやぞ」 「すいません」 「(ええええぇ…)はい。すいません。ちゃんとやります」 「ほな『もったいないから』のとこからやり直すで(ちーちゃん、キリッ!)。もったいないから♪」 「もったいないから♪」 「もったいないから♪」 「もったいないーかーらーーーーーーーーーー、『食べない』!!いや!『食べん』のかい!せっかくこの大雨の中、出前のお兄ちゃんが一品だけをわざわざチャリンコで配達してくれたのに『食べない』て!それこそ『もったいないやろおー!』」 (ぽかーん) 「あ、お客さん。今のですね。『あげない』を『食べない』にかけてましてね。『食べない』って。くすくす。面白くないですか?ふふふ。『食べない』て!ねえ」 (しーん) 「あ、すいませんね。なんか最初に怒鳴ったんで空気重いですよね?僕、そんな怖い人とかじゃあないですから。普段は公務員なんですよー。えへ」 (しーん) 「あ、あのー…」 「ん?お前らも我慢せんでええんやで。あ!このネタ、やるわ!お前らに。特別やで。漫才は『オチ』が大事やからね。ちゃんと『落とさ』ないと」 「(おい、どうする?)」 「(とりあえず、めんどくさいから無難にしとこう)あ、ありがとうございます!」 「このネタは振り付けが大事やからね。しっかり練習してね。ほな!」 売れない若手芸人のために、交機のちーちゃんは今日(非番の日限定)もいく。 ~完~
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