第二話『雨と黒い翼』

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第二話『雨と黒い翼』

「…ひっく……お父さん…お母さん…」 寒い…寒いよ……それに、なんだか冷たい。 …雨? 「…おい」 「…ぇ?」 声を掛けられ、振り向くと黒い翼をした人間とは思えないような男の人が立っていた。 「その音楽はなんだ?」 その…音楽? 私は胸に抱いた両親の形見のオルゴールを見つめる。 「……カノン」 「っ?!」 明らかに息を飲み込むような声にならない声を出し、男の人は目を見開く。 「あの……此処は何処ですか?」 今になって気付いたけど…此処は外。私の部屋じゃない。 「……」 男の人は答えてくれず、じっと私を見つめている。 「あの…」 「お前はどこから来た?」 逆に聞かれてしまった。 「…私、自分の部屋にいたんです……それが、気付いたら此処にいて…」 自分でも分からない。どうして…外にいるんだろう。 「国は?」 「…日本の東京です」 男の人はそれを聞くとはぁーと白い息を吐いて前髪をガシガシと掻く。 「少し待ってろ……ドゥ・ブクリエ」 聞きなれない言葉を男の人が唱えると私の周りに丸くオレンジ色の半透明のドームが出来た。 (暖かい…) 「あ…」 バサリと男の人は翼を広げ、飛び去ってしまった。 (お礼…言えなかった…)
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