ある、晴れた放課後

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『それで、土曜日夜までオッケーになったの?』 スマホを耳に当てたまま、自室の扉を開ける。机上のカレンダーが目に入る。土曜日まであと二日。嬉しくて頬が緩む。 「はい……直也が、あ、幼馴染なんですけど。今しか出来ない青春の1ページを無駄にするのはどうたらこうたらって……なんだか凄い力説で、親も気圧されてしまって。一応夜までオッケー貰いました」 『あははは、凄いなぁ〜。頼もしい幼馴染だね。ん……あれ? でも僕たちのことって』 「知らない、です」 『うーん、なかなか、直也くんは勘が良いのかもね』 「かもしれないです。俺に好きな人がいるって、気付いてるっぽくて」 マグカップのコーヒーを口に運ぶと、途端に受話口の向こう側から声が止み、沈黙が訪れる。 通話が切れてしまったのかと画面を確認するも、液晶には通話状態である“矢崎圭吾”と表示が確かに出ている。 「あ、あのっ、もしもし?」 何かまずいことでも、言ってしまったのだろうか。 『ごめん……ちょっと今、めっちゃニヤけてて。言葉が出なかった。この顔見られたら嫌われちゃうかもなぁ』 「に、にやけ、ですか? 何で?」 くすくす受話口から、圭吾さんの柔らかな笑い声が響く。 『好きな人って言ってくれたから』 その声は、胸を抉るだけの鋭さと、満たすだけの純度を携えて。 地下鉄で二駅離れた俺の心を、あっさりと奪っていく。 「そういうこと……言わないで下さい」 言いたい言葉を飲み込んで、再び口を付けたコーヒーはいつもより甘い。
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